# Debian Network Reinstall Script ## このスクリプトについて これは、あらゆるVPSや物理マシンを、ネットワークブート経由で最小構成のDebianに再インストールするためのスクリプトです。GRUBにDebianインストーラーを組み込み、インストールプロセスを自動的に設定することで動作します。 **主な用途:** - Oracle CloudのUbuntuイメージをDebianに変換 - クラウドプロバイダーの監視エージェントの削除 - クリーンで最小限のDebian環境の構築 - Preseedやcloud-initを使用したインストールの自動化 - 破損したシステムのレスキュー ## クイックスタート ```bash # スクリプトをダウンロード curl -fLO [https://raw.githubusercontent.com/bohanyang/debi/master/debi.sh](https://raw.githubusercontent.com/bohanyang/debi/master/debi.sh) chmod +x debi.sh # 基本的なインストール（sudo権限を持つ 'debian' ユーザーを作成） sudo ./debi.sh # もしくは、rootユーザーとしてインストール sudo ./debi.sh --user root # 準備ができたら再起動 sudo reboot ```` **デフォルト設定:** Debian 13 (trixie)、DHCPによるネットワーク設定、sudo権限を持つ`debian`ユーザーが作成され、パスワードの入力を求められます。 ## プラットフォームサポート | プラットフォーム | ステータス | 備考 | |---|---|---| | ✅ **KVM/物理マシン** | フルサポート | 全ての機能が動作します | | ✅ **ほとんどのVPS** | フルサポート | DigitalOcean, Vultr, Linodeなど | | ⚠️ **Google Cloud** | 手動でのネットワーク設定が必要 | DHCPが機能しないため`--ip`, `--gateway`が必須 | | ⚠️ **AWS EC2** | BIOSのみ | UEFIブートはまだサポートされていません | | ❌ **コンテナ** | サポート対象外 | GRUBブートローダーが必要です | **要件:** - KVMまたは物理マシン（コンテナは不可） - GRUB 2 ブートローダー - rootアクセス権限 ## 地域別プリセット | プリセット | ミラー | DNS | NTP | 最適な環境 | |---|---|---|---|---| | *Default* | deb.debian.org | Google DNS | time.google.com | グローバル | | `--cloudflare` | deb.debian.org | Cloudflare | time.cloudflare.com | グローバル (プライバシー重視) | | `--aws` | cdn-aws.deb.debian.org | Google DNS | time.aws.com | AWSインスタンス | | `--aliyun` | mirrors.aliyun.com | AliDNS | time.amazonaws.cn | 中国 | | `--ustc` | mirrors.ustc.edu.cn | DNSPod | time.amazonaws.cn | 中国 | | `--tuna` | mirrors.tuna.tsinghua.edu.cn | DNSPod | time.amazonaws.cn | 中国 | ## 全オプションリファレンス ### システムとユーザー設定 | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--version 13` | `13` | Debianのバージョン: `10`, `11`, `12`, `13`, `14` | | `--suite trixie` | `trixie` | Debianのスイート: `stable`, `testing`, `sid` など | | `--user debian` | `debian` | ユーザー名 (`root`を指定するとrootユーザーのみ) | | `--password PASSWORD` | *プロンプト* | ユーザーのパスワード（指定しない場合はプロンプト表示） | | `--authorized-keys-url URL` | *パスワード認証* | URLからSSH公開鍵を設定 (例: `https://github.com/user.keys`) | | `--no-account-setup` | *ユーザー作成* | ユーザー作成をスキップ（コンソールでの手動設定が必要） | | `--sudo-with-password` | *パスワード不要* | sudoコマンド実行時にパスワードを要求する | | `--timezone UTC` | `UTC` | システムのタイムゾーン (例: `Asia/Tokyo`) | | `--hostname NAME` | *現在の値* | システムのホスト名 | ### ネットワーク設定 | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--interface auto` | `auto` | ネットワークインターフェース (例: `eth0`, `eth1`) | | `--ip ADDRESS` | *DHCP* | 静的IP: `10.0.0.100`, `1.2.3.4/24`, `2001:db8::1/64` | | `--static-ipv4` | *DHCP* | 現在のIPv4設定を自動的に使用 | | `--netmask MASK` | *auto* | ネットマスク: `255.255.255.0`, `ffff:ffff:ffff:ffff::` | | `--gateway ADDRESS` | *auto* | ゲートウェイIP (`none`でゲートウェイなし) | | `--dns '8.8.8.8 8.8.4.4'` | `1.1.1.1 1.0.0.1` | IPv4用のDNSサーバー | | `--dns6 '2001:4860:4860::8888'` | `2606:4700:4700::1111` | IPv6用のDNSサーバー | | `--ethx` | *予測可能な名前* | `enp0s3`形式の代わりに`eth0`/`eth1`を使用 | | `--ntp time.google.com` | `time.google.com` | NTPサーバー | ### ネットワークコンソール（リモートインストール） | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--network-console` | *無効* | インストール中にSSHアクセスを有効化 | **ネットワークコンソールの使い方:** 1. `--network-console` を付けて有効化し、再起動します 2. Debianインストーラーがコンポーネントをロードするまで2〜3分待ちます 3. サーバーにSSH接続します: `ssh installer@YOUR_IP` 4. 複数のターミナルを利用できます: - **Alt+F1**: メインのインストーラー画面 - **Alt+F2**: シェルアクセス - **Alt+F3**: 追加のシェル - **Alt+F4**: システムログ（自動インストールの進捗を監視） - Alt+Left/Alt+Rightで画面を切り替え **⚠️ 注意事項** `--authorized-keys-url` を使用した場合、SSHのパスワード認証は無効になります（SSHキーが必須）。**ただし、ユーザーパスワードの設定が必要です（VNCコンソールやsudoでのアクセスのため）。** ### ストレージとパーティショニング | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--disk /dev/sda` | *自動検出* | 対象ディスク（複数ディスクがある場合は**必須**） | | `--no-disk-partitioning` | *自動パーティション* | コンソールで手動パーティショニングを行う | | `--filesystem ext4` | `ext4` | ルートファイルシステムのタイプ | | `--force-gpt` | *有効* | GPTパーティションテーブルを作成 | | `--no-force-gpt` | *GPTを使用* | 代わりにMBRパーティションテーブルを使用 | | `--bios` | *自動検出* | BIOSブートを強制（BIOSブートパーティションを作成） | | `--efi` | *自動検出* | EFIブートを強制（EFIシステムパーティションを作成） | | `--esp 106` | `106` | EFIシステムパーティションのサイズ (106=100MB, 538=512MB, 1075=1GB) | ### ミラーとリポジトリの設定 | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--mirror-protocol https` | `https` | ミラーのプロトコル: `http`, `https`, `ftp` | | `--https` | *有効* | `--mirror-protocol https` のエイリアス | | `--mirror-host deb.debian.org` | `deb.debian.org` | ミラーのホスト名 | | `--mirror-directory /debian` | `/debian` | ミラーのディレクトリパス | | `--mirror-proxy URL` | *なし* | ダウンロードとAPT用のHTTPプロキシ | | `--reuse-proxy` | *なし* | 既存の`http_proxy`環境変数を使用 | | `--security-repository URL` | *auto* | セキュリティアップデート用リポジトリ (`mirror`でメインミラーを使用) | ### APTリポジトリコンポーネント | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--apt-non-free-firmware` | *有効* | non-free-firmwareを含める (Debian 12以降) | | `--apt-non-free` | *無効* | non-freeリポジトリを有効化 | | `--apt-contrib` | *無効* | contribリポジトリを有効化 | | `--apt-src` | *有効* | ソースリポジトリを有効化 | | `--apt-backports` | *有効* | backportsリポジトリを有効化 | | `--no-apt-non-free-firmware` | *デフォルトを使用* | non-free-firmwareを無効化 | | `--no-apt-non-free` | *デフォルトを使用* | non-freeを無効化 | | `--no-apt-contrib` | *デフォルトを使用* | contribを無効化 | | `--no-apt-src` | *デフォルトを使用* | ソースリポジトリを無効化 | | `--no-apt-backports` | *デフォルトを使用* | backportsを無効化 | ### パッケージインストール | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--install 'pkg1 pkg2'` | *最小構成* | 追加パッケージ（スペース区切り、引用符で囲む） | | `--install-recommends` | *有効* | 推奨パッケージをインストール | | `--no-install-recommends` | *推奨をインストール* | 推奨パッケージをスキップ | | `--upgrade safe-upgrade` | `safe-upgrade` | パッケージのアップグレードモード | | `--safe-upgrade` | *デフォルト* | インストール中に安全なパッケージアップグレードを実行 | | `--full-upgrade` | *safe upgrade* | フルシステムアップグレード (`dist-upgrade`) | | `--no-upgrade` | *safe upgrade* | パッケージのアップグレードを完全にスキップ | ### カーネルオプション | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--kernel PACKAGE` | `linux-image-ARCH` | カーネルパッケージ名 | | `--cloud-kernel` | *標準* | クラウド最適化カーネルを使用 | | `--bpo-kernel` | *stable* | backportsから新しいカーネルを使用 | | `--firmware` | *自動検出* | ハードウェア用のnon-freeファームウェアを含める | ### 詳細オプション | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--ssh-port 2222` | `22` | カスタムSSHポート | | `--bbr` | *無効* | TCP BBR輻輳制御アルゴリズムを有効化 | | `--architecture amd64` | *自動検出* | 対象アーキテクチャ: `amd64`, `arm64`, `i386` など | | `--force-lowmem 1` | *auto* | 低メモリモードを強制: `0`, `1`, `2` (512MB未満のRAM用) | | `--no-force-efi-extra-removable` | *有効* | EFIの追加リムーバブルメディアパスを無効化 | | `--grub-timeout 5` | `5` | GRUBメニューのタイムアウト秒数 | ### Debianインストーラーオプション | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--release-d-i` | *auto* | リリース版のdebian-installerを使用 | | `--daily-d-i` | *auto* | デイリービルド版のdebian-installerを使用 | ### Cloud-Init連携 | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--cidata /path/to/dir` | *なし* | カスタムcloud-initデータディレクトリ | **Cloud-Initの使い方:** ```bash # cloud-init設定を作成 mkdir my-cloud-config echo "instance-id: my-server" > my-cloud-config/meta-data cat > my-cloud-config/user-data << 'EOF' #cloud-config hostname: my-server packages: - htop - git EOF # インストール時に使用 sudo ./debi.sh --cidata my-cloud-config ``` ### 開発とテスト | オプション | デフォルト値 | 説明 | |---|---|---| | `--dry-run` | *実行* | インストールは行わず、設定ファイルのみ生成 | | `--hold` | *再起動* | インストール後に再起動しない | | `--power-off` | *再起動* | 再起動の代わりに電源をオフにする | ## 使用例 ### Oracle Cloud (Ubuntu → Debian) ```bash sudo ./debi.sh --cloudflare --user debian ``` ### Google Cloud Platform ```bash # GCPでは手動でのネットワーク設定が必要（お使いのVPC設定に置き換えてください） sudo ./debi.sh --ip 10.128.0.100/24 --gateway 10.128.0.1 ``` ### 最小構成でのインストール ```bash sudo ./debi.sh --no-install-recommends --install 'curl git vim' --no-upgrade ``` ### 中国向けデプロイ ```bash sudo ./debi.sh --ustc --timezone Asia/Shanghai --dns '119.29.29.29' ``` ### ネットワークコンソールでのインストール ```bash # インストール中にリモートアクセスを有効化（ネットワーク接続はSSHキー、VNC/sudoはパスワードが引き続き必要） sudo ./debi.sh --network-console --authorized-keys-url [https://github.com/yourusername.keys](https://github.com/yourusername.keys) # 再起動後、SSH接続: ssh installer@YOUR_IP ``` ### 静的IPとCloud-Initを使用 ```bash sudo ./debi.sh --ip 192.168.1.100/24 --gateway 192.168.1.1 --cidata ./cloud-config/ ``` ### 高度なカスタム設定 ```bash sudo ./debi.sh \ --version 13 \ --user admin \ --timezone Europe/London \ --disk /dev/nvme0n1 \ --filesystem btrfs \ --cloud-kernel \ --bbr \ --ssh-port 2222 \ --install 'htop iotop ncdu' ``` ## トラブルシューティング ### 全ての変更を元に戻す ```bash # 全ての変更を削除し、元のGRUB設定を復元 sudo rm -rf /etc/default/grub.d/zz-debi.cfg /boot/debian-* sudo update-grub || sudo grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg ``` ### よくある問題 **複数のディスクが検出された場合:** ```bash # 利用可能なディスクをリスト表示 lsblk # 対象ディスクを指定 sudo ./debi.sh --disk /dev/sda ``` **低メモリのVPS (\<512MB) の場合:** ```bash sudo ./debi.sh --force-lowmem 1 ``` **ネットワーク設定に失敗する場合:** ```bash # 現在のネットワーク設定を使用 sudo ./debi.sh --static-ipv4 # または手動で設定 sudo ./debi.sh --ip YOUR_IP/CIDR --gateway YOUR_GATEWAY ``` **ネットワークカードにファームウェアが必要な場合:** ```bash sudo ./debi.sh --firmware ``` **インストールのデバッグ:** ```bash # preseedファイルのみを生成 sudo ./debi.sh --dry-run # リモートアクセス用にネットワークコンソールを有効化（リモートはSSHキー、VNC/sudoはパスワードが必要） sudo ./debi.sh --network-console --authorized-keys-url YOUR_KEYS_URL ``` ## 動作の仕組み 1. **Debianインストーラーをダウンロード**し、`/boot/debian-$VERSION/`に配置します 2. 指定された設定で**preseedファイルを生成**します 3. **GRUBの設定を変更**し、インストーラーのメニューエントリを追加します 4. インストーラーのinitramfsに**設定を注入**します 5. **GRUBを更新**し、新しいブートオプションを反映させます **システムに加えられる変更:** - `/boot/debian-*/` にファイルが追加されます - `/etc/default/grub.d/zz-debi.cfg` にGRUB設定が追加されます - GRUBメニューが更新されます **これらの変更は安全であり、再起動前であれば上記の「元に戻す」コマンドで取り消すことが可能です。** ----- *Created by [@bohanyang](https://github.com/bohanyang) • [Issues](https://github.com/bohanyang/debi/issues) • [GitHub](https://github.com/bohanyang/debi)*